1LDK叙事詩

続ける事を目標としているので、内容については一貫性がありません。

父との記憶

当時の父は岩のようだった。

 

寡黙な人で何を考えているかわからなかった。

朝早くから仕事へ行き、帰ってきて晩酌をして、寝る。そんな記憶。

身体は180cmを越え、肉体労働をしていたのもあり目の前に立つ父は壁のよう。

 

父について思い出す時に毎回通る記憶がある。

 

自分が小学生の頃の休日、おそらく日曜日。

出ていった姉の部屋を貰った僕は、弟との二人部屋から卒業した。

 

僕と弟の部屋は2階にあり、弟の部屋の真下がリビングになっていた。

経緯は忘れてしまったが、弟の部屋に物を投げたり投げられたりして騒がしくしていた。声変わりもしたかしていないかでぎゃーぎゃー煩かったのか、いきなり階下から怒号が聞こえて、父が僕の部屋に怒鳴り込んできた。

右手には金属バットを持って。

父はローテーブルをバットで叩き威嚇した。

ひどく混乱した。父が怒鳴り込んでくることなど今まで無かったし、そこまでのことをしたつもりもなかったからだ。

鬼がいる、と思った。言葉も発せず泣きながら過呼吸になってしまい、死を覚悟した。

自分が長男であるだけで、自分だけが怒られる。理不尽な死を。

 

鬼が去ったあと、様子を見に来た母が僕をなだめていた。弟は察して引っ込んでいた。

 

そんな記憶。それ以降、父に対して潜在的恐怖、緊張感を感じながら生活していくことになる。