1LDK叙事詩

続ける事を目標としているので、内容については一貫性がありません。

ファナティック圧倒的左腕ちゃん

動物が収容される4畳くらいの板間に入ってしまって、猫やら犬やらがバタバタと騒ぎ出してしまった。ニンゲンが入ってきて申し訳ない。

犬種まではわからないが黒い大型犬に左腕を噛まれる。振り解こうと思っても離れない。だが、下してない時の便意くらいで我慢出来るので、しばらくこのままにしておこうと思う。

刺激して、更に強く噛まれたら大変だからね。

ところで、何の話をしていたっけ?

 

 

あぁ、そうそう。

 

全く興味の無い対バンを観に行くためにホールまで向かっていた。興味が無い、というより自分の好むジャンルではない、と言った方が正しいか。

事前情報も(当たり前だが)よく分からないのですが、おぼろげながら浮かんできたんですね、『アイドル』という情報が。

ただ、本当に申し訳ないんですが、そのグループが男性アイドルなのか女性アイドルなのかすらわからない、男女混合なのかもしれない、それくらいで改札を抜けた先、駅直結のホールの会場に着いたわけです。

扉は開いていて入り口付近の通路には同じ趣味を共有しているであろう大量の人々が、屯していて、開演時間過ぎてるのになんでやろか?と思いながら小走りで中に入ると、千人単位でのキャパシティを有する(と思われる)客席にはどう大目に見積もっても百人間弱、およそ五十人前後の観客しかいなかった。

ああ、外にいるのはお地蔵さまなのか。

 

そして、その数十人の空白とも呼べる観客たち、異様な雰囲気で踊り狂っていた。

ステージ上のメンバーが恐縮してどんどん小さくなっていく。

 

「あ、」特に目を引く観客の方を見ていると向こうもこっちを認識したようで、知人が(来たんだ)とゆっくり大きく口を開けて伝えてくる。

あなたが呼んだんですよね、と詰め寄りたくもなったが、この凄惨な現場を見てしまうと何も言えない。

僕みたいな部外者にも声をかけたくなる、そんな気持ちもわかるような気がした。

気がした、ので近くの席まで行き、ステージと客席を交互に見様見真似で踊って盛り上げた。

 

 

左腕のワンちゃんをサイリウム代わりに振り上げながら。